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心身を癒す入浴の効果と方法|日本人が生み出した健康の知恵

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心身を癒す入浴の効果と方法|日本人が生み出した健康の知恵

「湯治(とうじ)」という言葉があるように私たち日本人は、昔からお湯に浸かることで心身を清めたり、癒してきました。

しかし、最近では「入浴するのは面倒くさい」「体を綺麗にするだけならシャワーだけで十分」という理由からお湯に浸かる習慣が失われつつあります。

現代人は、心身に疲労が蓄積し、さまざまな体の不調に悩まされていますが、実はそれらを予防・解決する一つの糸口が「入浴」です。

ぜひ、この記事を参考に先人たちが生み出した「入浴の知恵」を享受して、心身の健康を保っていただきたいと思います。

1.お湯に浸かることが身体に与える5つの効果

1-1.温熱による深部体温の上昇、血行促進

全身の細胞に酸素と栄養分を届けているのが血液。そして疲労物質を回収してくれるのも血液です。そのため、新鮮な血液を体にしっかり巡らせることが症状改善、疲労回復には大切です。

 

入浴はシャワーよりも体の深部までしっかり温めるので、筋肉の緊張をゆるめて血管を拡張させます。その結果、血液の流れを良くして内臓や筋肉への酸素の供給や栄養の補給が増え、治癒力を高めることに最も効果的なのです。

1-2.浮力による重力からの解放

水の中では浮力がかかり、体が軽く感じられます。首まで湯船に浸かると、体重は通常時の10分の1程度になると言われています。体重60キロなら6キロ。普段、重力の影響を受けて体を支えている筋肉や関節の負担が解放され、心身のストレスが解消されます。また腰や膝などの痛みがある場合も浮力によって筋肉が緩みやすくなり、温熱の血行促進とあいまって症状の改善にも効果的です。

 

1-3.静水圧による引き締め(ポンプ作用)

肩まで浸かった場合、湯の水圧(静水圧)は500kgにもなり、胸囲は2〜3㎝、腹囲は3〜5㎝縮むほどの影響を受けています。この静水圧は皮下の血管やリンパ管を圧迫して血行を良くし、新陳代謝を活発にします。また、全身への穏やかなマッサージ効果を生み、特に下半身に溜まった血液が心臓へ押し戻されるポンプ作用も働き、むくみや冷えの改善にもつながります。

 

1-4.免疫力アップ(白血球の働き)

血液中の老廃物を回収してくれるのが血液の中にある白血球です。白血球は殺菌作用やガン細胞をやっつける作用、また免疫物質を作るなどの様々な種類と役割をもっています。そして、この白血球は運動後や入浴後の体が温まっているときに働きを促進させることが分かっています。入浴は免疫力がアップし、病気やケガの予防、改善に効果的です。

 

1-5.リラックス効果でストレス解消

ゆっくり入浴する時間を持つことで、リラックスでき自律神経の副交感神経が優位になります。また気分が落ち着きリラックスした時に脳から出るα波によって、心身ともにゆったりとして、ストレス解消にも効果的です。

 

2.効果的な入浴方法

入浴方法

 

2-1.温度は38〜41度のぬるめのお湯が適している

熱いお湯にサッと入るのが好きな方もいらっしゃると思いますが、疲労を回復し健康的な入浴には38度〜41度くらいのぬるめのお湯が適しています。もちろん、人の基礎体温は異なりますし、季節によっても状況は変わりますので、「ぬるい」と感じる温度と「熱い」と感じる温度も変わってきます。

 

ですので、目安のひとつとして40度前後、または自分の体温にプラス4度くらいの温度が適していると考えてください。

2-2.42度が効果的な入浴の境界線


熱すぎる温度は生命に危険を生じます。人間の体は、おおむね、お湯の温度が約43度以上になると「熱い」と感じ、身体が敵に侵害されていると感じる神経が反応する仕組みになっています。

 

ですから、熱いお湯に入ると、心身は興奮して自律神経の交感神経が働きはじめます。そうすると血圧が上がり、脈拍が速まり、汗をかき、筋肉が緊張して硬くなります。さらに胃腸などの働きが弱まってしまいます。

反対に、38〜41度のぬるめのお湯は、気持ちのよい温度だと感じる神経が反応するようにできているので、リラックスして副交感神経が刺激されます。血圧は安定またはゆっくり低下し、筋肉の緊張は取れて柔らかくなり、胃腸の働きは胃液の分泌が促進されて活発になります。
ですので、入浴の効果を得るためには、おおむね41度、高くても42度までが理想といえます。

2-3.時間は15〜20分を目安に

お湯の温度でも時間は変わりますが、40度前後のお湯に15分~20分前後、浸かるのがおすすめです。水分を十分に摂ってゆっくり温まってください。

※この際、水分は「塩水」を摂るようにするとさらに効果的です。塩水についての詳細は以下の記事を参考にしてください。

体の疲労・不調の解消に効果的な水の飲み方3つのポイント

 

入浴の時間が短いと十分体が温まりません。また長すぎると身体に負担となったり、乾燥肌の原因になったりする可能性があります。無理をせず、あくまで「気持ちよく」入浴することが大切です。

ある実験では、

①40℃~42℃のお湯に20分浸かったグループと、
②同様のお湯に5分浸かったグループとで

身体を修復してくれるタンパク質の量に違いがでるか否かを調べたところ、①は身体を修復するたんぱく質が増加したのに対し、②は全く増えていなかったそうです。

なお、この効果を高めるためには、お風呂から上がったあとも身体を冷やさないようにすることも大切です。

2-4.半身浴より全身浴がオススメ

半身浴は心臓や肺に負担が少ないというメリットがありますので、心臓や肺に不安のある方は半身浴が適していますが、そうでなければ、これまでお伝えした、温熱による血行促進や浮力、静水圧などの効果が得られやすい全身浴がオススメです。

効果的な入浴をまとめると、38〜41度のぬるめのお湯に15分前後~20分程度、肩までしっかり浸かるのが理想です。

個人差や体調によっても異なります。入浴に慣れていない人は、最初から我慢して長く浸かるのではなく、少しずつ慣らして無理なく行うと効果的ですし、体を洗ったり頭を洗ったりする時間を間に入れて、5分程度の入浴に分けてみるのも良いと思います。また、長く湯船に浸かっていることが習慣の人も、間に半身浴の時間を作るなどして、負担にならないようにお身体の調子をみながら入浴してください。

3.入浴効果をさらに上げる2つのこと

3-1.塩風呂

浴槽に塩をひとつかみ程度入れるのもオススメです。塩分が体をコーティングして保温・保湿効果が高まり、抹消血管の血行も良くするので、発汗作用が高まり新陳代謝も進みます。

また、ミネラルが水道水に溶け込むことで、肌と浸透圧が近くなり、肌に優しく、かつ、汗と一緒に毛穴に詰まった皮脂や身体の汚れを落としてくれる効果もあります。週に2〜3回が目安で、お肌の弱い人は状態を見ながらおこなってください。

また、塩は精製された塩(食塩)ではなく、ナトリウム以外のミネラルも含んだ天然塩(粗塩や岩塩など)がオススメです。

※塩分は風呂釜等を傷めますので、循環式の浴槽の場合は行わないようにしてください。

また、塩ではありませんが、代用品としてエプソムソルトもおすすめです。(こちらは風呂釜を傷めるなどの心配がありませんので日常使いしやすいです)

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3-2.入浴後に効果的なセルフケア

体が芯まで温まっている入浴後に、無理のない範囲で行うストレッチは筋肉が緩みやすく効果的です。

以下のストレッチは特に足首やふくらはぎにつながる筋肉をゆるめ、全身の血行を良くするので、むくみや冷えの解消にも効果があり、入浴後におこなうと更に効果的です。

 

4.時間がない場合は手浴、足浴も効果的

朝や夜の忙しい時間に短時間でできる手浴、足浴も効果的です。

①手浴

洗面器などに40度くらいのお湯を張り、手首から先(または肘から先)を10〜15分つけて、お湯がぬるくなったら熱い湯を加える。手や腕の血流が良くなり、手や肘の症状、肩こりなどにも効果的です。

②足浴

大きめのバケツに40度くらいのお湯を張り、ふくらはぎまで10〜15分浸かる。足裏や第2の心臓であるふくらはぎのポンプ作用も促進され、全身の血行がよくなり、ポカポカと温まります。足裏の痛み、腰痛や膝の痛みにも効果的です。

5.お風呂は、生まれ変わりの場

日本人の入浴の起源は、6世紀の仏教の伝来とともに、沐浴(もくよく)の功徳を説いた仏教の教えが広まったからだと言われています。

沐浴とは、からだを洗い潔めることで、昔の寺院ではお参りする前に沐浴を行ったそうです。つまり、入浴とは、自分の日々溜まっていく心身の汚れを落とす時間でもあったのです。

時間に追われる現代だからこそ、1日の終わりに「入浴の時間」を作ることは、きっと日々の生活にゆとりと活力を与えてくれることでしょう。