「命を守る」を優先に。夏の体調不良への対策
猛暑の中、いかがお過ごしでしょうか?
夏の体調不良といえば脱水症と熱中症が代表的です。毎年緊急搬送される方も多く、亡くなられる方もいます。すでに当院の患者さんの中にも暑さで体調を崩したというお声が少なからず聞かれます。そんな中でも、今年の夏は「史上最高の暑さ」と言われており、例年以上に命の危険があると言っても決しておおげさではありません。そこで、今日からすぐにできる対策をまとめました。
1.汗をたくさんかく
通常、私たちの平均体温は36〜37℃に保たれていますが、外気温度が上がったり運動をしたりして体温が上昇すると、体は元に戻そうと汗をかいて体温を下げようとします。また、汗ほど目に見えてあきらかでなくても、水分は毛穴から常に蒸発しています。
特に夏は冬と比べ、倍の量の水分を失っていると言われていますので、蒸発する水分に対して補給する水分が足りないと脱水状態を起こし、汗をかきにくくなります。すると体温調整ができなくなって体温が上昇し続け、熱中症にかかるリスクが高まってしまうのです。
「汗がすごく出るのがすごく嫌で…」とお悩みの方もいらっしゃると思いますが、体が正常に働いている証拠です。汗をかけない方が体にとっては大問題なのです。
このように、脱水症と熱中症はセットで起きやすいと考えておいた方が良いです。ですので、脱水状態ならないように、またはなってしまった時も、いち早く気づくことが大切です。
尿の状態から判断する脱水のサイン
しかし、脱水状態を起こしている時は脳の感覚認知のはたらきも鈍りますから、皮肉なことに、気づかなければいけない時ほど気づきにくい状態に陥ってしまうのです。誰もはじめから熱中症になろうと思ってなる人はいないはずです。「つもり」と「実際」は異なっていることを前提に過ごしていただいた方が、予防に意識が向き、リスクを減らせると思います。
そんな中で、ポイントになるのが尿の状態です。
・いつもよりおしっこの回数が少ない
・尿の色がやけに濃い
などと気づいた場合は、自覚はなくとも脱水のサインかもしれません。判断基準の1つとしてこまめにチェックしてみてください。
汗をたくさんかくためには?
1.水分補給
熱中症対策として必ず筆頭に叫ばれる水分補給ですが、効果的な水の飲み方があります。FMT整体では、もう何年も前から患者さんに天然塩で作った塩水をおすすめしています。
塩にはミネラル成分がたくさん含まれているからです。ミネラルは基礎代謝や新陳代謝、エネルギー代謝を促す物質です。つまり、汗をかく働きもミネラルのおかげ。ただの水よりもはるかに効果的なのです。
ミネラルは、ストレスや睡眠不足、偏った食事、過剰な飲酒や喫煙などによって生まれる活性酸素を除去するのに大量に消費されます。この異常な暑さもまた、過度な「ストレス」にほかなりませんから、夏は特にミネラルを意識して摂る必要があります。
■飲む量は?
1日に失われる水分と同量を補給することが望ましいです。
目安として、
体重【㎏】×30【ml】= 1日に必要な水の量【ml】とされています。
(例:50kgの方の場合、1.5ℓ前後)
体格や体質のほか、運動量や食事内容(食事からも水分補給されます)などによっても異なりますので、各自で調整は必要ですが、夏は「いつもと同じでは足りない」ことを念頭において取り組んでみてください。
ただし、一気に飲んでも効果がないばかりか、体内のpHのバランスが崩れ、かえって体調不良につながる可能性がありますので、1日の中でまんべんなく摂取してください。
また、水の温度はできれば常温以上(※太文字などで目立つように)が理想的です。内臓が冷えると体が熱の発散を止めてしまうため、逆効果です。外から帰ってきたばかりで体が熱気を帯びているのを一時的に冷ますなどの場合には良いですが、クーラーの効いた部屋で過ごしている時は常温以上を心がけましょう。
■塩はどのぐらい入れるの?
0.1パーセントほどの塩分濃度ですと体にとても吸収されやすくなります。
例:2ℓの水に対してだと、小さじ半分(約2g強)です。
なお、この場合の「塩」とは、
・天然製法のもの(天日で乾燥させたり釜で煮詰めたりしたもの)
・岩塩
が好ましいです。
【!】海水から塩化ナトリウムだけを抽出した精製塩(化学塩)は、他のミネラルが不足しているため、体内の電解質バランスを崩す可能性があるとされているので、おすすめできません。
【!】「ミネラルを摂るなら、スポーツドリンクでも良いですか?」という質問もよくいただきますが、市販のスポーツドリンクには多量の糖分が含まれているので、おすすめできません。
脱水症や熱中症に限らず、ほとんど全ての慢性症状にも効果的です。詳しくはブログをご覧ください。
体の疲労・不調の解消に効果的な水の飲み方3つのポイント
2.夏野菜を食べる
昔からの言葉に、身土不二(しんどふじ)というものがあります。「自分の住んでいる土地で、その季節に採れたものを食べると体が整う」という考えですが、実は科学的にも理にかなっています。
例えば、夏野菜の代表格であるキュウリ、スイカ、ナス、トマト、オクラ、ゴーヤ……などには、水分とミネラルの一種であるカリウムがたっぷり含まれています。水分とカリウムが多いと発汗作用が働き、体外への熱の発散を助けてくれます。また、カリウムには利尿作用もあるため、余計な塩分や水分の排出を促す効果もあります。
さらに、キュウリ、スイカ、ゴーヤなどウリ科の野菜に多く含まれるシトルリンという成分には、血管拡張と血流促進のはたらきがあります。そして、野菜や果物に含まれる抗酸化物質(=フィトケミカル)には体の炎症を抑え、細胞のダメージを防いで体内の熱を軽減する作用があります。
暑いと、ついつい手っ取り早く涼を求めて冷たいジュースやビール、アイスなどに手をのばしがちですが、急激に内臓を冷やすために体が熱を蓄えようとする方向に働いてしまいます。また、これらに含まれる糖質・糖分によって体内で炎症が起きやすくなり、慢性疲労につながっていきます。慢性疲労の状態で体が正常に動くはずがありませんので、常にダルさや疲労感がある方は、なるべく控えた方が賢明です。
なお、
・スイカの糖質は100グラムあたり約8グラム
・ご飯の糖質は100グラムあたりの約28グラム
同じ重量で比較すると、果物の糖質は多くの人が想像するよりもずっと少ないことがわかります。
さらに、果物には食物繊維が豊富に含まれているので、血糖値の急上昇を防いでくれます。
この夏は、ほどよく体を冷やしてくれて夏の自然な甘みも堪能できるスイカやメロンなどをアイスの代わりに食べてみてはいかがでしょうか?
3.汗が蒸発しやすい工夫を!
汗には体温調整の機能があることを伝えてきましたが、実は、汗をかいた「だけ」で体温が下がるわけではありません。厳密に言うと、かいた汗の水分が蒸発する際に肌から熱を奪うことで体温が下がるのです。これを「気化熱」と言います。エアコンが存在しなかった時代に生まれた、家の周りに水を撒いて涼を呼び込むための知恵である打ち水と同じ原理です。
しかし、近年の日本の異常な暑さは気温だけの問題ではなく、むしろ湿度の高さが大きく影響していると言われています。気温だけでいえば40〜50℃が当たり前の中東系の国からの旅行者が「自分の国よりも日本の方が暑い」とまで言うくらいですから相当です。
空気中の湿度が高いと、汗をかいてもすぐに蒸発せず皮膚に長くとどまり続けるので、水を飲んで気をつけていたのにも関わらず、熱中症になってしまう可能性も大いにあるのです。
ですので、
・汗をかいたら、こまめに拭きとる
・吸汗速乾の機能が高い素材でできたインナーや服を着る
(化学繊維が苦手な方は、リネンがおすすめです)
などの一工夫もとても有効です。
2.脳の温度を下げる
ここまでは主に体温調整の話をしてきましたが、脳の温度を下げていく取り組みも非常に大切です。
なぜなら、脳には体温調整などをはじめとした生命維持機能を司る自律神経の中枢があるからです。そもそも脳が機能しなければ、「汗をかけ」という指令を出せなくなってしまうのです。また、面積あたりの発熱量が体の中で一番多い部位でもありますから、脳をクールダウンして休ませてあげることは、体を休ませることに直結するのです。
ただし、氷嚢(ひょうのう)などで頭を直接冷やすわけではありません。いざ熱中症になった時や寝付きをよくするために、一時的に行うのであれば有効な対処法ではありますが、いつも冷やしているとだんだん血流が悪くなってしまいます。血流が悪くてもやはり脳は機能しにくくなりますから、体余計に熱がこもってしまいます。
では、どうすればいいのでしょうか?
脳の温度を下げる呼吸法
脳の自律神経の中枢は鼻腔に近い場所にあるため、鼻から冷たい空気を吸う呼吸がおすすめです。自律神経の中枢を冷やすことにつながります。
日頃から続けていると熱中症の予防につながります。また、少しふらつきが出ているかも?と気づいてすぐの段階で行なえば、それ以上ひどくならずに済む可能性も見込めます。
自律神経の乱れ全般に効果的で、患者さんの中には「これを行なったあとは毎回必ず高血圧の数値が下がる」「動悸がおさまる」などとお声をいただいていますので、朝起きてからや仕事の合間、また寝る前など、1日に数回行うとい良いでしょう。
ただし、お風呂など熱気と湿気がこもったところで行なうとかえってのぼせますから、涼しい場所で行ないましょう。
詳しい方法は、以下のYouTubeで方法をチェック!
たくさん汗をかくことや自律神経を整える呼吸は、私たちの体にもともと備わっている「天然のエアコン機能」とも言えます。この機能を最大限に活かすための取り組みをここまで紹介してきました。
とはいうものの、ここ近年はヒトの平均体温並みか、それ以上に暑い日も珍しいことではなくなってきています。私たちの体は現在の構造になるまでにも何百万年もかかっていますので、これほど激しい環境変化に対して急に適応できるはずがありません。
事実、患者さんからも「冷やすのは良くないとわかっていますが、エアコンをつけないと、とても眠れなくて……。つけても良いですか?」というお声も年々増えつつあります。
3.エアコンを効果的に活用する
2023年時点での総務省消防庁の過去5年間の統計データによると、熱中症にかかって搬送された人のうち、40%は住居(夜間・睡眠中)で発症していることがわかっています。また、2023年の東京23区内でのデータでは、屋内にて熱中症で亡くなった方のうち、90%がエアコン未使用または未設置だったといいます。
冷やすことで受けるダメージは確かにありえますが、それ以上に熱中症で受けるダメージの方が命に関わるため、はるかに深刻です。また、寝苦しくて睡眠の質が落ちると体そのものの回復機能も低下してしまいます。ですので、無理せずエアコンを使用するよう私たちも推奨しています。
多くの場合、エアコンの使い方で悩ましいのは夜ではないでしょうか?昼は自分も動いている上、こまめに設定を変えることができるので適温に保たれやすいですが、夜はほとんど動かず、寝ていて調整もできないので、冷えっぱなしになってしまうことを懸念される患者さんが多いです。
そこで、体の仕組みと近年の熱中症の傾向から、夜のエアコンの上手な使い方を提案いたします。
■何度に設定すると良い?
室温(エアコンのリモコンでの設定温度ではなく、部屋自体の温度)が28℃を超えると熱中症のリスクが高まると言われています。ですので、室温計が28℃を超えることがないように調整してみてください。
■タイマー?or朝までつけっぱなし?
夜中に目覚めることなくぐっすり眠れて、朝も疲労感が残っていない場合にはタイマーでOKです。
しかし、夜中に何度も目が覚めたり、目覚めないけれども朝起きた時にだるい、疲れが取れていないなどの感じがするのであれば、朝までつけっぱなしにすることを検討しても良いかもしれません。
寝ている間にも体から蒸発した汗や呼気により部屋の湿度はだんだん上がっていきますので、タイマーが切れた後に体温が上昇して熱中症にかかるリスクが生まれるからです。また、何度も目が覚め、疲れが取れないと、翌日の体温調整の機能低下につながってしまいます。
住んでいる地域や住宅環境などにもよりますが、近年では機密性の高い住宅が多くなっており、昼間の暑さがコンクリート壁に蓄熱されます。そのピークが夜11時ごろで、やっとそれ以降から放熱が始まるようなので、夜中で外気は涼しいはずなのに室内温度が下がらないことも夜間の熱中症が多い一因とされています。
■頭寒足熱の知恵を取り入れる
頭(脳)は冷やした方が休まりやすい一方で、体が冷気で冷えてしまうと血流が悪くなり、疲労回復しにくくなります。そのため、体には布団やシーツをかけたり、寝返りを打って布団からはみ出た部分の冷え対策として、長袖・長ズボンを着用するのも対策の1つです。もし汗をかいても、布が汗を吸って肌にとどまり続けず気化しやすいため、体温調整にも一役買います。
これらを使って快適に感じるくらいの室温設定に調整してみるのも良いと思います。
ただし、これらはあくまで冷えが気になる人に向けての対策案ですので、家族で同じ部屋で寝ている場合には、個人差があると思いますので、冷気が全く気にならない人は、もちろん半袖半ズボンでも構いません。これらを目安の1つにしながら、各家庭で調整してみてください。
また、エアコンにせよ、扇風機やサーキュレーターにせよ、体に風が長時間当たり続けるのもあまりよくありません。風向設定や首振り機能、風量などにも気をつけて調整してみてくださいね!
最後に
普段は体を冷やさないように、と口を酸っぱくして伝えている私たちをよく知っている皆さんからすると、エアコンの件は意外に思われたかもしれませんね。
ですが、近年の命に関わるような暑さは、体にとっては「非常事態」ともいえます。
非常事態に一番優先されるべきは、あなたの命そのものです。
何を一番に優先していったらいいのか、その時の状況に応じて、柔軟に考え取り入れていきたいですね。あなたとあなたの大事なご家族さま全員で、工夫しながら猛暑の夏を乗り切っていきましょう!