15年来の両足裏の痛み 40代 | 男性
建設業に従事するEさんは15年前から両足裏の痛みを抱えていました。立ち仕事と歩くことが多い仕事で、10,000歩を超えることも日常茶飯事でしたが、痛みながらもこなしていました。しかし、4年前に毎日30,000歩を歩く仕事が2年間続いたことで激痛レベルにまで悪化。
当院に来院する1〜2ヶ月前には左の足裏に固いしこりのようなものがあることに気づき、病院で検査をすると悪性ではないものの腫瘍(しゅよう)ができていることがわかったそうです。足裏以外にも、かれこれ26〜27年来の慢性腰痛のほか、腕の痺れなど、いろいろな症状が現れていました。
症状・診断
主な症状は、
・歩行で痛む。特にかたまっていた後からの歩き出しの数歩が激痛
→その後歩いているとだんだん痛みは減ってくる
・靴によっても痛みが上下する(安全靴はかなり痛い)
・左の土踏まずに硬いしこりができる
病院では、
・足底筋膜炎と診断を受ける
・左の土踏まずのしこりは腫瘍だとわかった
腫瘍とは、細胞の異常な増殖によって生じる塊のことで、良性の場合は周囲の組織に侵入したり転移しませんが、悪性の場合はがん(癌)と呼ばれます。Eさんの場合は悪性ではないから心配いらないとは言われたそうですが、触ると弾力ゼロで石のように硬く、ただ事ではないように感じました。
なお、このような場合、足底線維腫症(そくていせんいしゅしょう)や足底腱膜線維腫(そくていけんまくせんいしゅ)などと言われる症状名がつくこともあるようです。
また、足以外にも下記の症状を長年抱えていました。
・26〜27年来の慢性腰痛(診断:椎間板ヘルニア)
・左腕全体と人差し指のしびれ(診断:頚椎ヘルニア)
・熟睡障害(入眠剤使用で寝れてはいるが、寝た気がしない)
治療計画・方針
Eさんの足首は、底屈(足首を下に向かって動かす動き)に比べると背屈(足首を手前に引く動き)がほとんどできなくなっていました。こうなると、足をつったり、何もないところでつまづいたりする方が結構多いので、Eさんにも同様のことがないか尋ねたところ、案の定両方ともよくあることだそうです。
これは多くの足底筋膜炎の方によく見られる特徴の1つであり、施術では偏りを減らすお手伝いをしていくことを伝えました。
また、腰痛や腕のしびれも長年あったため、足裏だけどうにかすればよいというものではないこともお伝えしました。
Eさんの体は「どこどこが硬い」と特定していく以前の問題のように感じました。柔らかいところがほとんど感じられないため、全身の流れをまんべんなく良くしていくことが先決であり、とにかくお風呂に毎日浸かるようアドバイスをしました。それまでのEさんは基本シャワーのみで入浴習慣は全くありませんでした。
症状改善までの経過
2回目の来院時:1週間後。左足裏のしこりが明らかに小さくなっていた。Eさんもそれは認識しつつも、足の痛みは全然変わらず激痛のままなので喜ぶには程遠い反応。
しかし、毎日お風呂に10分入浴したことで、とにかくよく眠れたことに驚いた。仕事柄、毎朝5時に起きないといけないのだが、寝覚めがとてもよかった。
今回は1週間でこれたが、仕事などで毎週来るのは難しく、3週間に一回がやっとというので、身体の状態に合ったセルフケアを毎日行なうようにお伝えした。
3回目:引き続きよく眠れている。
そして、足裏の痛みが劇的に減った。来院時の痛みを10とすると、右はすごく良い(=ほぼ0)、左は10→3に。しこりを押すと痛むが、歩行ではほぼ痛くない状態に。
このときには、腕のしびれも「全く気にならない」とのこと。
腰も今までが嘘かのように痛くないそう。
4回目:両足ともに「全然痛くない」「左は違和感があるくらい」までに改善。
また、長年35℃台だった平均体温が36.5℃に上がったとの報告もいただく。
5回目:調子はさらに良い。
何年かぶりに静岡県へ海釣りに行ってきた。未明に神奈川県を出発して何時間も運転をするので、次の日の仕事を思うと、これまで心身ともに余裕がなかったが、体が元気になってきたので行く気になったとのこと。
症状は、強いて言えば「かかとが重いかな」ということで、Eさんの今の状態に合わせたエクササイズを伝える。2回目以降は3週間おきに通院していたが、調子が良いことと仕事や私用が立て込んでいることもあり、次回は2ヶ月後に。
私用の1つは、大好きな洋楽アーティストの来日公演のライブチケットが2日連続でとれたこと。長時間の立ちっぱなしが2日続くことへの不安もゼロではないが、前だったらとてもじゃないが無理だったであろう予定を立てられるようになった。
6回目:足の裏は違和感くらい。腕のしびれも腰も気にならず、調子がよいのでケアをサボっている。
前後で足が痛むこともなく、ライブは最高だったと興奮冷めやらぬ様子で教えてくれた。
調子がとても良いのと、仕事が忙しいこともあり、何かあればまた連絡をいただくことにして、定期通院は一旦ここで区切りとしました。
施術家からのコメント
当院に初めていらした時のEさんは、下手すると数十年のうちお風呂に入浴したのはほんの数える程度でした。それに加え、時期は暑さが猛威をふるう真っ只中だったこともあり、「お風呂に毎日入ってください」と伝えたときのEさんの第一声をそのまま書くと、「お風呂?このクソ暑いのにですか!?」と、清々しいくらいに正直な反応をされました。
Eさんほど率直な反応ではないにせよ、他の患者さんも大なり小なり同じように感じているだろうと思いつつ、私たちもお伝えしているところではあります。ですが、「これまでやってきたことで治らないんだから、やってなかったことをやってみよう」と、その日からEさんは毎日お風呂に入りました。Eさんの率直さや素直さには終始一貫性があることがわかります。
そのあとはもうほとんど説明不要でした。足裏だけではなく他のすべての症状もみるみる改善していき、何回目かの来院時には「お風呂最高ですよ。もう入らないと気持ち悪くって」とおっしゃるまでの激変ぶりでした。最初はこの暑いのにお風呂って嘘でしょって思ったけど今では入るなと言われても入りますよ、というようなこともおっしゃっていました。
正直なところ、足底筋膜炎は15年来の症状な上に、腫瘍ができているケースは初めてだったのと、他にも決して軽度ではない全身症状を長年お持ちだったので、初診の際にEさんに10回までの間に変化が出てきたらかなり良い方だと思うとお伝えしていました。ですので、こんなに早く改善するとは良い意味で予想外でした。
結果論ではありますが、Eさんの場合は長年の疲労蓄積があちこちに溜まってはいたものの、複雑化していなかったがゆえに、シンプルなケアで早期に結果がついてきたのではないかと思います。
最後に、Eさんが書いてくださったアンケートの声の一部を紹介いたします。
一部の体の痛みだと思っていたのですが、根本的な身体からの信号だと理解しました。来院して先生のアドバイスを実行してからは、睡眠への影響も改善されて、自分の身体と向き合えたのは素晴らしい成果だったと思います。
これからもEさんの健やかな毎日を願っています。